
「飲食店の魅力的なコンセプトや事業のプラス面を伝えられるプレゼン資料をつくりたい」
融資や賃貸のために、飲食店のプレゼン資料はどのように作成すると失敗がないのでしょうか。
今回は、飲食店のためのプレゼン資料を作成する時のポイントを解説します。あわせてプレゼンに盛り込んでおきたい項目もまとめました。
この記事を読めば、飲食店に特化したプレゼン資料の作り方が分かります。

自店の魅力的なコンセプトや事業のプラス面が伝わるプレゼン資料は、開業や事業転換などの場面で役立ちます。
飲食店にプレゼン資料が必要になる時とは


飲食店にとって、プレゼン資料が必要になるのは以下のようなタイミングです。
- 賃貸物件の貸主から店舗を借りる時
- 銀行から事業資金の融資を受ける時
- 店舗のコンセプトなど方向性の見直しをする時
- 従業員への説明やコミュニケーションを図る時
店舗のオープンや移転のタイミングのほか、経営方針を変えたり共有したりする大切なタイミングで必要になります。
賃貸物件の貸主から店舗を借りる時
賃貸物件の貸主と契約して店舗のスペースを借りる時には、検討材料としてプレゼン資料を提出しましょう。
提出義務がない場合もありますが、プレゼン資料があれば、これから展開する飲食店の概要をより詳細に提示できて、貸主へのアピールにつながります。
貸主の目線からは、資料で以下のポイントが示されていると審査に役立ちます。
- 周囲の飲食店とジャンルや提供するメニューが重複しないか(特に同じ貸主が周辺に複数の物件を所有しており、すでに飲食店が入居している場合)
- 場所柄と提供するメニューやサービスが合っているか
- 安定した家賃を払えるだけの収益性があるか
- 信頼できる経歴の人物に借りてもらえるか
物件をスムーズに借りられるよう、相手に刺さるプレゼン資料を作成しましょう!
銀行から事業資金の融資を受ける時
新規開店や店舗移転をする際には、銀行から事業資金の融資を受ける場合があります。
特に創業期の初期投資など、自己資金だけでまかないきれない場合には融資が不可欠です。
融資額を店舗事業によって返済できるかが銀行側の判断を左右します。
以下が融資判断に必要な代表的な項目です。
記載項目 | 記載内容 |
---|---|
代表者のプロフィール | 職歴や技能 |
事業計画 | 自店舗の紹介や将来像 |
収支計画 | ・必要な資金額 ・収益性計画(中長期) ・流動性計画(中長期) |
代表者の能力を伝えるほかに、事業や収支の面で目標を達成できる計画を具体的に掲載しましょう。
従業員への説明やコミュニケーションを図る時
店舗のコンセプトや集客ターゲットなどを、店舗運営に関わる従業員に説明する必要もあります。
説明は口頭で伝えるよりも、資料を用いて言葉や数字・ビジュアルまで共有できると従業員側の理解が深く、効果的です。
店舗として大切にしている点を従業員全体で共有すると、以下のメリットが生まれます。
- 接客スタンスが一定になる
- 提供メニューの質がぶれない
- 説明機会自体が経営者と従業員、または従業員同士のコミュニケーションになる
- 店舗の移転やリニューアルのタイミングが訪れた時に、方向性を従業員と一緒に検討できる
より強固な店舗イメージの醸成や来店者の満足度アップのために、プレゼン資料も活用して従業員も巻き込んだチームでの店舗運営を目指しましょう。
飲食店のプレゼン資料を作成する5つのポイント


プレゼン資料の作成には、飲食店ならではの以下5つのポイントがあります。
- 自店の強みとコンセプトを絞って伝える
- 他店と差別化できるポイントを盛り込む
- 過去の実績を紹介する
- 事業計画を5W2Hで具体的に伝える
- 返済の見通しを示す
収益を上げられる店舗と示せるように、客観的かつ具体的な情報を伝えることが重要です。それぞれ詳しく解説します。
1. 自店の強みとコンセプトを絞って伝える
まずは自店の強みやコンセプトを、プレゼン相手に印象付けられるよう絞って伝えます。
飲食店にとって、多くの選択肢の中から選ばれるには他店にない強みを打ち出すことが重要です。
強みやコンセプトを考える際には、環境分析(SWOT分析)が使えます。以下のとおり内部環境と外部環境を4つの象限で整理する分析方法です。
- 強み(Strength)
- 弱み(Weakness)
- 機会(Opportunity)
- 脅威(Threat)
分析結果から強みやコンセプトが何か明確に言葉にしておき、プレゼン資料で打ち出せるようにしておきましょう。
2. 他店と差別化できるポイントを盛り込む



自店の強みやコンセプト以外にも、他店と差別化できるポイントは盛り込んでおきましょう。
飲食店は同業他社が多く、他店に負けてしまうと店舗経営が立ち行かない場合もあります。
自店が他店と差別化できるポイントを明確にした上で、安定して売上や利益が生まれる仕組みを示せば、融資先や賃貸の貸主からの信頼につながります。
例えば以下のような差別化ポイントがあります。
- 価格:他店よりもリーズナブルで回転率が良い
- サービス内容:来店につながる魅力的なサービス内容がある
- その他アピールポイント:メニューのビジュアルがSNS発信に向いている
自店の強みやコンセプトを整理する中で見つかった差別化のポイントは、プレゼン資料で強調できると効果的です。
さらに、他店の調査を行った場合は根拠となる数字や内容を示して説得力のある資料を作成しましょう。
3. 過去の実績を紹介する
店舗や代表者について、過去の実績も紹介しましょう。
ここで言う実績とは「事業が軌道に乗り継続できる・成功できる」根拠です。
実績は見通しよりも説得力が増すため、以前店舗を経営していたなら紹介できるようにしておきましょう。
新規開業の場合は店舗経営の実績が示しにくいため、代表者のこれまでの料理人としての経歴を実績としてアピールする方法があります。
例えば以下のような経歴がアピールに使えます。
- 勤務歴のある店舗名
- 店舗での役割
- 料理の評価(お客様からの声など)
- 受賞歴
過去の実績や経歴によって、これから開業する店舗でもお客様に選ばれ、事業が成功できると示しましょう。
4. 事業計画を5W2Hで具体的に伝える
5W2Hは事業計画を具体的に示すときに使えるフレームワークです。
事業計画のようなボリュームのある情報をプレゼン相手に伝える時、5W2Hで整理するとわかりやすく伝わります。
以下の5W2Hの項目に沿って、事業計画を整理した上でプレゼン資料に盛り込みます。
5W(What, Why, Who, When, Where) | |
---|---|
1. What(何を) | 何を提供するのか? |
2. Why(なぜ) | なぜ飲食事業をするのか?顧客からどんなニーズがあるのか? |
3. Who(誰が) | 誰をターゲットとするのか?誰が事業を担当するのか? |
4. When(いつ) | いつ営業するのか? |
5. Where(どこで) | どこに店舗を構えるのか? |
2H(How, How much) | |
---|---|
6. How(どのように) | どのような方法でサービスを提供するのか?店舗を運営するのか? |
7. How much(いくらで) | どれくらいの費用がかかるのか?どのくらいの価格を設定するのか? |
店舗の全体像を簡潔に、抜け漏れなく示しましょう。
5. 融資の返済の見通しを示す
融資の返済の見通しは、飲食店のプレゼンに欠かせない要素です。
銀行など金融機関からの融資を受ける場合は返済する能力を、賃貸物件で店舗を運営する場合は賃料を支払う能力を示す必要があります。
以下のように数字を算出して、達成可能な目標の記載が必要です。
- 年間売上と利益
- 年間にかかる経費
- 借りた資金を返済できる目処
例えば融資額500万円を5年以内で返済する計画なら、年間の利益が100万円以上である点を示します。



運営方針の独自性や集客の見込める立地であることなど、目標計画が達成できる材料も一緒にアピールしましょう。
飲食店のプレゼン資料に必要な内容


飲食店のプレゼン資料では、以下の内容を網羅できると効果的です。
- コンセプト
- 主力商品
- 市場分析と競合分析
- 集客計画
- 代表者のプロフィール
- 従業員・取引先・関連企業などステークホルダー情報
- 収支計画
自店の魅力や強みをはじめ今後の運営や収支に関わる計画を詳細に示すと、相手に信頼感を与えられます。一つずつ解説します。
コンセプト
飲食店のプレゼン資料には、最初にコンセプトが必要です。
店舗として目指すべき方向性を関係者へ共有するとともに、開業後の経営においても節目のタイミングで確認に利用できます。
コンセプトは、以下の項目にそって整理しておきましょう。



ここに記載しているコンセプトはあくまでも一例です
項目 | 内容 | 記載例や留意点 |
---|---|---|
基本のコンセプト | 創業や店舗オープンにかける想い、自店を一言で伝える表現 | ・「日本一」「美味しい」など漠然とした言葉は避ける ・等身大の言葉で表現する |
立地と物件 | 実際に店舗を構えたいエリアの具体的なイメージ | ・平日日中に活気のあるオフィス街 ・地域のシニア層や主婦層のランチ利用が見込める郊外 ・アクセスの良い〇〇駅から徒歩〇分以内 |
ターゲット | 年代・男女・居住エリア・職業などの構成比 | ・30〜40代のファミリー層:子供づれでも安心して外食をしたい ・ランチタイムの会社員:仕事の合間に食事を楽しみたい ・トレンド情報を発信してくれる20〜30代の若者世代:料理やドリンクの写真をSNSにアップして共有したい ・〇〇線沿線の在住者:近所で気軽にランチやお茶を楽しみたい |
サービスやオペレーション | 接客の内容重点的な取り組み | ・カウンターで気軽に料理の注文と受取ができる ・メニューのこだわりを詳細に説明して選べるようにする ・子供向けのスペースを設けて親子で過ごせる雰囲気にする |
店内外の環境 | 外装や内装のイメージ、特にこだわりたい点 | ・看板のイメージ ・メインカラー ・〇〇調のイメージ(北欧のナチュラルな雰囲気、モダンなコンクリート基調、など) ・雰囲気(高級感のある路線、コミュニティになじむアットホームな路線、など) ・照明、BGM、など |
項目に沿ってコンセプトを言語化しておき、プレゼン資料としてまとめておきましょう。
主力商品
主力商品として、提供するドリンクやフードのメニューや価格を提示します。
提供するドリンクやフードのメニュー次第で、何が店舗の目玉になるのかをアピールできます。
また、主力商品の価格によって販売単価や原価率が決まり、店舗の回転率も掛け合わせれば売上目標も設定できます。
以下のように、できるだけ具体的な設定を提示しましょう。
旬の素材を中心にした創作料理店での記載例
- 主力商品
- 日中:日替わりランチのセットを提供[売上シェア30%]
- 夜:一品料理とドリンクを中心に提供[売上シェア70%]
- セールスポイント
- 夜は「本日のおすすめ」で旬の食材をフックにした高単価の料理を提供する
- ビールやオリジナルカクテルのほか、日本酒のリストから料理に合うドリンクを提供する
- 客単価
- 昼:1,100円
- 夜:4,500円
主力商品のメニューや価格から、店舗の売りを伝えましょう。
市場分析と競合分析
店舗のプレゼンをする上では、市場分析や競合分析の情報も重要です。
競合や市場をリサーチしたうえで、自店のメリットになりそうな点や他店にないポイントを積極的に記載しておくと、事業のプラス面をアピールできます。
例えば以下のような記載があるとわかりやすくなります。
- オフィス街の一角に立地。店舗の立地は最寄駅から徒歩*分圏内で仕事帰りのビジネスパーソンが通勤経路として行き来している
- チェーンの居酒屋は多いが、落ち着いた雰囲気の店舗や食事内容にこだわった店舗が少ない
- ターゲットとしているビジネスパーソンのランチや飲み会での需要が期待される



立地やターゲット、提供する主力商品などの切り口で環境や他店を分析して、自店の強みをアピールしましょう。
集客計画
プレゼンには、自店の宣伝方針を示す集客計画も含めましょう。
ターゲットや立地に集客方針が合致している点や、コストに見合う点を示して理解を得ることが大切です。
以下のような集客計画の例が示せます。
- 忘年会シーズンに店舗前でチラシ配布[チラシ部数と制作費・印刷費を記載]
- SNSで宣伝[経費は無料|店舗スタッフの業務に発信を組み込む]
- 来店者が口コミや再来店に使える割引券を配布[割引金額と発行枚数や期間を記載]
宣伝にはコストがかかるため、必要な費用とともに効果的な集客計画が示せると、説得力がアップします。
代表者のプロフィール
プロフィールとして、代表者の職歴も記載します。
代表者の学歴や職歴が創業動機や店舗のコンセプトに沿っていると、プレゼン相手の信頼につながります。
以下が代表的な記載項目です。
- 店舗オープンの目的や動機に関連する事業経験(飲食業界での経験や実績、表彰歴など)
- 経営に携わった経歴(店長の経験歴など)
- 関連資格
- (取得していれば)商標権や特許権などの知的財産権
過去の経歴や実績が、今回オープンする店舗にどのように活かせるのかを強調して記載しましょう。
従業員・取引先・関連企業など関係者情報
従業員の人員計画や仕入れが見込まれる取引先、外注で関わる関連企業など、店舗に関わる関係者の情報も掲載します。



人員計画は採用予算や人件費を左右する要素です。
また、取引先や外注先が記載されていると計画に具体性が見えて信頼感が得られます。さらに見積金額まで記載できれば、高精度の収支計画が提示できます。
具体的な掲載項目としては以下のとおりです。
掲載情報 | 掲載項目 |
---|---|
従業員 | ・雇用形態(正社員・パート・アルバイト) ・人数(店舗の大きさや席数、営業時間、店舗の運営から算出) |
取引先・外注先 | ・ドリンクや食材の仕入れ先 ・内装や外装工事の発注先 ・チラシ制作やSNS運用の外注先 |
店舗の関係者情報まで具体的に掲載して、開設や運営の計画を現実的に示しましょう。
収支計画
プレゼン資料には、収支計画の掲載も必須です。
融資元や物件の貸主に対して、資金面での信頼性を収支計画で示す必要があります。
具体的には以下の3点を示すことが重要です。
- 安定的に経営ができるのか
- 融資額を何年で返済できるのか
- 賃貸の店舗家賃を問題なく支払える収益があるか
利益の予測を算出して、無理なく採算の取れる利益が確保できそうならば融資や賃貸審査でプラス評価となります。
収支計画は、以下のように大きく売上計画・投資計画・損益計画に分けて提示します。
分類 | 計画の内容 | 算出項目 |
---|---|---|
売上計画 | 毎月、毎年あげられる売上とランニングコスト | ・客単価と席数、回転数、営業日数から算出できる売上高 ・仕入れにかかる原価 ・人件費、家賃、支払い利息、外注費などの経費 |
投資計画 | 開店に必要な投資額の見積 | ・店舗の内装や外装の工事費 ・厨房や空調を整備する設備費 ・消耗品や備品の購入費 |
損益計画 | 資金調達方法と事業の見通し | ・資金繰りと返済計画 ・融資を受けた額 ・融資の返済完了までの期間(毎年返済できる額) |
収支計画は無理やり利益が出るように記載するのではなく、現実的な計画のもと、確実に利益の上がるシミュレーションを立てておきましょう。
飲食店のプレゼン資料作成の準備に使えるリンク集


飲食店のプレゼン資料作成のためには、掲載内容の準備が必要です。
資料を整える前に、準備に使える3つの参考リンクを紹介します。
コンセプトの整理や収支計画等の下書きに利用できる参考サイト
飲食店の創業や資金の借入のためには、事業計画や収支計画の立案が必要です。
記入用の書式があれば、プレゼン資料を作成する前に下書きができます。書式を無料でダウンロードできるサイトを2つ紹介します。
日本政策金融公庫
借入申込書、創業計画書などの書式がダウンロード可能です。記入例も合わせてダウンロードできるため、書きかたも参考になります。
書式の種類が多いため、事業計画の具体性に応じて必要な書式を選んで利用しましょう。
J-Net21(独立行政法人中小企業基盤整備機構)


事業計画書作成の上で気をつけたいポイントの解説と、事業計画書フォーマットのダウンロードが可能です。
全7ページのシンプルなフォーマット内に記入項目が網羅されており、必要事項を簡潔にまとめる際に役立ちます。WordとPDF2つの書式があるため、利用できるソフトに合わせてダウンロードしましょう。
スライド掲載内容のイメージを閲覧できる参考サイト
Slides Carnival
飲食店のプレゼン資料テンプレートをCanvaとGoogleスライド、PowerPointの3つの形式から選んでダウンロードできます。
テンプレートとして利用できるほか、メニューのビジュアルやコンセプトの見せ方など、飲食店ならではのデザインや雰囲気も参考にできます。
まとめ:ポイントを押さえてご自身の飲食店をプレゼンしよう


今回は、飲食店のためのプレゼン資料を作成する時のポイントを解説しました。



プレゼン資料が必要とされる目的から、掲載が必要な項目もまとめました。
飲食店にとって、融資や新たな店舗の賃貸、事業の見直しといった大切なタイミングでは、事業説明の資料が欠かせません。ぜひこの記事を参考に、飲食店向けのポイントを押さえたプレゼン資料作りに挑戦してみてください。
当サイトの運営するチームでは、プレゼンの成功につながる資料制作のノウハウを提供するとともに、作成の依頼をお受けしております。
飲食店向けのように、業態に特化したプレゼン資料もご提案が可能です。詳しくはぜひ制作代行のご案内をご覧ください。